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西部の州中心に生産増加するカナダ大豆

 カナダ大豆協会は1月21日、東京・港区のカナダ大使館において「カナダ食品大豆セミナー」を開催した。
 今回のセミナーでは、ケベック州商業作物生産者連盟のラムジー・エルダ氏が「カナダ大豆生産トレンドと将来の展望」、カナダ大豆協会のニコール・マッケラー氏が「カナダ食用大豆データベース」、カナダIP大豆生産者のジェーコブ・マン氏が「農家に始まるトレーサビリティ」、オンタリオ州穀物生産者協会のクロスビー・デヴィット氏が「大豆育種・研究へのコミットメント」、カナダ穀物委員会のランディー・デニス氏が「カナダの品質へのコミットメント」についてそれぞれ講演した。
 カナダ統計局によると、2013年の同国大豆作付面積は182万9,000ha(前年比108.9%)で、収穫面積は182万ha(同108.5%)となった。単収は2.86トン/ha(同94.4%)と必ずしも万全ではなかったものの、生産量は519万8,000トン(同102.2%)と「大豆の収穫量は強靭さを示し、2年連続で史上最高になった」(マッケラー氏)という。カナダは、世界の大豆生産で大きなシェアを占める米国やブラジル、アルゼンチンに比べると小規模な生産量だが、わが国を含めてIPハンドリングされたノンGM大豆の供給では重要な地位を占めている。
 13年産の州別作付面積は、オンタリオ州が101万1,736ha(前年比94.3%)、ケベック州が28万8,506ha(同98.8%)と伸び悩んだものの、マニトバ州は42万4,929ha(同124.3%)と大幅に拡大し、大西洋岸州(プリンス・エドワード島州)も小規模ながら3万4,803ha(同156.4%)に伸ばした。また、13年から新たにサスカチュワン州で商業栽培が始まり6万8,798haで作付けが行われた。その結果、各州の大豆生産量はオンタリオ州307万8,088トン(ノンGM比率20%)、ケベック州84万7,002トン(同27%)、マニトバ州106万8,210トン(ノンGM比率4%)、大西洋岸州8万6,681トン(同10%)、サスカチュワン州11万8,387トン(同0%)となった。歴史的に見ると、オンタリオ州で始まったカナダの大豆栽培は、早性品種の開発が進み、西部、北部へと栽培地を広げてきている。近年、主産地のオンタリオ州や、ケベック州の作付面積がほぼ横ばい傾向にあるのに対し、マニトバ州における顕著な拡大や、大西洋岸州での増加、さらにサスカチュワン州にも広がった。エルダ氏は「過去5~6年の推移を見ると、生産量の増加は主に西部の州=マニトバ州の貢献が大きい。限界に達しておらず、まだ伸ばす余地があると考えられる」と語った。
 カナダの穀物生産は作付面積を見ても西部の州が中心となっている。マニトバ州や新たに大豆生産が始まったサスカチュワン州といった西部の州で、小さな割合が大豆生産へシフトするだけでも大きな生産量の変化へ繋がる可能性がある。エルダ氏は「様々な報告によると、西部カナダにおいて今後5~10年間で最大200万haの大豆生産が予想される。実現するかどうかは確実ではないが見守っていきたい。官民双方の研究機関が新品種開発に向けて多額の投資をしている。早性品種の開発は特に西部カナダ向けに行われている」と西部州を中心とする大豆生産の拡大に期待を示した。

 ただ、ノンGM大豆の生産量は2010年に150万トンに達したものの、過去2年で大きく減少し、13年産は89万5,701トンにとどまった。「その理由は主として価格プレミアムのためだ。GM大豆、ノンGM大豆、それ以外のどれを生産するかという判断は相場や市況の動きに左右される。しかし、現在のところ、農家は14年産に関していえば、より高いプレミアムを提供されるということなので、ノンGM大豆の生産が増える見通しを持っている」(エルダ氏)という。14年の作付けに関しては、ノンGM大豆のプレミアムの上昇により、オンタリオ州やケベック州でノンGM大豆の生産が増加すると予想されている。「品種の改善や生産技術の向上により、ノンGM大豆、GM大豆双方の単収は今後も増加し続けるだろうと思う。向こう数年、非常に興味深い状況が展開されると考えている」というのがエルダ氏の見解だ。