• 油脂のトピックス

ヒマワリ油

 ヒマワリ油は世界で4番目に生産量の多い植物油脂であり、年間1,200万トン程度が消費されている。ヒマワリの原産地は米国西部とされており、主要作物の中では唯一、米国を源流とする作物である。そのヒマワリは18世紀に新大陸探検を介して欧州へと伝播し、ロシアや東欧での栽培も広がっていった。
 ヒマワリ種子の生産量は世界で3,000万トンを超える水準となっている。原産地である米国の生産量は100万トン台と多くなく、EUやロシア・ウクライナが世界の生産量の約6割を占めている。また、19世紀に広まったアルゼンチンでは300万トン前後が生産され、ヒマワリ油は同国の主要な食用油のひとつとなっている。EUでは、再生可能燃料向けにナタネ油の生産・消費が増えており、相対的に食用油としてヒマワリ油の価値が高まる傾向にある。
 ヒマワリ種子の脂肪酸組成は、米国北部の在来品種ではリノール酸が約70%、オレイン酸が20%程度というのが代表的。ただし、リノール酸とオレイン酸の比率は、気温などの生育条件に左右され、低温環境下では高リノール酸、高温では高オレイン酸となる傾向がある。しかし、栽培条件に左右されない高オレイン酸品種が開発され、1980年代より商業栽培されている。高オレイン酸品種のヒマワリ油は、オレイン酸に富み、リノール酸が少ないことに由来する酸化安定性の高さから、スナック類や米菓をはじめとする食品用途、さらにクリームなど化粧品、工業用途にも利用されている。
 また、近年の米国では、NuSunと呼ばれるオレイン酸含有量が50%前後の中オレイン酸品種の栽培が主流を占めている。加工食品におけるトランス脂肪酸の低減化や飽和脂肪酸の代替が進められる中で、米国ではNuSun、欧州では高オレイン酸ヒマワリ油の利用が増加している。 
 わが国のヒマワリ油消費量は、2010年で約1万8,600トンとなっている。その9割以上が食用だが、単体油としての利用は2,600トン程度と比較的少なく、加工用が1万4,000トン以上、非食用は1,500トン程度となっている。食用油としては、昭和産業が2000年に「オレインリッチ」を発売し、一般家庭へのヒマワリ油の普及と認知を広げた。そのほか、調合油の油種として、また業務用フライ油などにも幅広く使われている。
 しかし、わが国においては、チョコレート用のカカオバター代用脂を中心とした加工用途が圧倒的なボリュームを占めている。この分野で世界をリードするのが不二製油で、高オレイン酸ヒマワリ油をベースに、エステル交換と分別技術を駆使して、様々な機能性を付与したチョコレート代用脂を展開している。
 ヒマワリ油の供給は、アルゼンチンや米国、豪州産など、ほぼすべて輸入に依存している。2009年以降、わが国のヒマワリ油輸入量は、年間2万トンを若干下回る水準だ。これまでヒマワリ油需要は、日本がリードしてきたが、中国や韓国をはじめ東アジア諸国でも飽和脂肪酸低減などを目的にフライ油での利用が増えているほか、育児粉乳向けの需要も高まっている。

世界のヒマワリ種子、ヒマワリ油生産量
(単位:千トン)
ヒマワリ種子生産量ヒマワリ油生産量
2009/102010/112009/102010/11
EU-276,9056,8022,5912,578
ロシア6,4255,3502,5052,082
ウクライナ6,3646,7692,5852,746
アルゼンチン2,3003,5601,1461,257
トルコ8001,000626671
その他7,5927,5352,2482,116
合計30,38631,01611,70111,450
(資料:米国農務省)