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不二製油グループ本社㈱2018年度第二四半期決算
複数の事業柱を持つ強み発揮し営業利益過去最高

 不二製油グループ本社は11月15日、東京・丸の内の大和コンファレンスホールで2018年度上期決算説明会を開催した。上期の連結業績は売上高1,471億4,300万円(前年同期比1.7%減)、営業利益94億7,800万円(同0.9%増)、経常利益95億3,400万円(同3.5%増)、四半期純利益43億8,600万円(同24.4%減)となった。
 清水洋史社長は上期を総括し、「天災が非常に多かった。特に大阪は多かった。北海道も。地球温暖化の影響がこういうところにもきているんだと思うが、日本のチョコレートは残念ながらアイスクリーム用が猛暑で少し不振だった。その割に付加価値の高いチョコレートが売れた。機能性素材については順調。通期の見通しについては、世界ではアジア、特に中国の工場が順調に稼働しており、パンの市場を中心に拡販している。大豆たん白のたん白食品の市場は下期型なので頑張って売っていく。安定化DHA・EPAは、来年下期から販売ができる目途がついた。さらに、豪州をはじめ、いくつかの環太平洋のチョコレート工場ができており、グローバルなチョコレート戦略を進めようと考えている。不二製油は油脂とチョコレート、油脂とクリームという風に、油脂を持っている会社だということが大きい。上期は油脂が頑張って儲けてくれた。そうでないときもある。こういういくつものアイテムを持つ会社はそう多くない。最近は専業の会社が多いわけだが、これが技術を中心に経営する会社の一番大事なところだろう」と語った。
 上期実績や通期予想、中計の進捗については松本智樹CFOが説明した。まず、上期実績については「営業利益は対前年わずかではあるが増益になっており、過去最高益を更新しているが、2Qの3カ月は3億円のマイナスだった。これは主に、アジアの調製品事業の減益が大きな要因。それと上期に大きな減損損失を計上している。中国の大豆たん白素材の吉林の工場の稼働を停止した関係で約18億円、大阪北部地震の影響による災害で5億円の損失を上期に計上している」と述べた。営業利益の増減要因ついては「単価要因が大きく増益となった一方で、拡販要因がマイナスになった。単価要因では主に日本の油脂事業が採算重視の販売により利益を確保した。一方で、拡販要因では米国の油脂が寒波の影響等による数量の減少と、日本の大豆たん白食品の減少があった」と分析した。なお通期の業績予想については、売上高3,120億円(前年比1.4%増)、営業利益213億円(同4.0%増)、経常利益207億円(同3.6%増)、当期純利益140億円(同1.9%増)を見込む。営業利益についてはセグメント間内訳の変更はあるものの当初の213億円から修正していないが、売上高は上期実績や為替動向を踏まえて当初予想から100億円減に修正した。

 通期のセグメント別、エリア別の戦略のポイントとしては、まず製菓・製パン事業は「天候の影響をあまり言いたくないが、今年の夏は異常で、その挽回を下期に図る。トップシーズンにかけて特に成型チョコレート等の付加価値型のチョコレートを拡販する。製菓・製パンの落ち込みを3Qのトップシーズンで補填していく形になる。新しい販売体制も取っているので、その成果が出てくる」としている。大豆事業については「健康・栄養市場向けは引き続き堅調。特に粒状大豆たん白が非常に好調なので、この辺りが利益を牽引していく。大豆たん白食品は下期型なので、確実に拡販を進める形になろうかと思う」との見方を示した。
 アジアについては「上期において2億円ほど油脂において減益になった。これは相場の影響もある。海外は特にヤシ油、パーム核油といったラウリン系油脂の相場に連動したフォーミュラに基づく販売が主流であり、相場の綾で搾油、精製マージンが低下している。上期はチョコレート用油脂を中心に付加価値型の油脂は好調だったが、コモディティ商品により減益となった。下期はチョコレート用油脂のシーズンなので、対前年1億円ほどの増益を計画している。製菓・製パン素材は、主に乳製品の相場変動で急激な上昇の後、急激に下落する状況だった2017年度の調製品は過去最高益を更新した。当期はその反動と、相場の大幅な下落もあり、約半分ほどの利益になっている。下期は乳製品相場がまた若干上昇しており、上期のような減益要因は一服し、来期は通常通りに戻ると考えている。中国の新工場(肇慶)は7月に稼働し、8月から黒字化している。中国のマーガリン、カスタード需要は引き続き旺盛。上期にアジアの利益は対前年4億円の減益だったが、下期は対前年同期で5億円の増益を見込んでいる」という。調製品については過去の同社の実績を見ても利益が大きく出た翌年は利益が減少する傾向がある。松本CFOは「調製品を扱う事業会社はマーガリン、クリーム等の製菓・製パン素材も製造販売している。そういう素材をより拡販していくことがこの事業のボラティリティを減らすことになる」との見方を示した。
 米州については「1Qに米国の油脂会社の稼働が少し減ったこともあり減益となったが、下期はほぼ計画並みの数量を確保する。利益的にも堅調に推移するものとみている。また、ブラジルのチョコレートも採算重視の販売に転換しているので、利益を確保してく」考え。ただし、ブラジルのレアルが弱く、全体的に輸入原料のコストが上がってきている。砂糖を含めて相場は落ち着いてきているので当初見込みから大きな利益の減少はないが、チョコレート需要がブラジルの市場全体で5%程度減っており、米州の営業利益は当初予想から通期で3億円引き下げている。