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第119回食用加工油脂技術研究会が開催

 (一財)全日本マーガリン協会が主催する食用加工油脂技術研究会は6月9日、東京・日本橋の油脂工業会館で第119回同研究会および平成29年度総会を開催した。今回は、三菱ケミカルフーズ第一事業部門技術部マネジャー兼同研究開発センター主任研究員の有馬哲史氏が「O/W型乳化物に対するショ糖脂肪酸エステルやポリソルベートの効果」、京都大学大学院農学研究科品質評価学分野助教の松宮健太郎氏が「小麦粉食品中の油脂の可視化と特性解析」、ミヨシ油脂食品本部技術部技術開発一課研究員の仲西賢剛氏が「OPO/POP 2成分系が形成する分子間化合物の冷却速度依存的な結晶化挙動について」、それぞれ講演した。
 有馬氏は、油脂結晶とエマルションの基礎的・応用的な関係性を最近の研究動向を交えて紹介した上で、応用例として、コーヒークリームの固化抑制とコーヒー飲料中での安定性を向上させた開発品「乳化油脂 EM-64」を挙げた。硬化ヤシ油を用いたコーヒークリームにおいて安定なO/W乳化を得るには親水性乳化剤のみでは不十分で、エマルション中の油脂結晶状態を制御する低HLBのショ糖脂肪酸エステルのように疎水性乳化剤を組み合わせると乳化安定につながること等を説明した。
 松宮氏は、パン生地における油脂とたん白質の相互作用を明らかにするとともに、チョコレートをコーティングしたビスケットにおける油脂移行の挙動について解析した結果を示した。また、ライスワックスやエチルセルロースを使用して油脂物性を変化させ、油脂移行速度の低下を試みた検討についても紹介し、ビスケットの白色化と油脂移行そのものを同じ現象として捉えるのではなく、色素移行と油脂移行を区別して議論しなければならない可能性を示唆した。
 仲西氏は、分子間化合物の結晶化挙動を示差走査熱量計で観察した結果や、大型放射光施設を利用して時間分割X線解析測定により結晶多形を観察した結果を示した上で、等温結晶化による核形成速度の比較についても説明した。それらの結果、冷却速度の調整や冷却後の加熱でマーガリンの油脂結晶を制御できる可能性を示した。