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さらなる飛躍に向けた不二製油グループの新中期経営計画

 不二製油グループ本社は2月23日、東京・丸の内の鉄鋼ビルディング南館において新中期経営計画説明会を開催した。「Towards a Further Leap 2020」と名付けた新中計は、従来のローリング方式から固定式に見直し、2017~2020年度の4年間を対象期間とするもの。世界的に戦える経営体制、経営インフラ、財務体質の整備と、生産効率の向上を優先課題に、目標を明確化した改革を確実に推進していく。新中計全体の概要、考え方については清水洋史社長が、基本方針・成長戦略については酒井幹夫CSOが、財務戦略については松本智樹CFOがそれぞれ説明した。

従来の中計で、ありたい姿2030、あるべき姿2020を設定してきたが、既存事業の延長による成長だけでは、大きなギャップがある。「ギャップを認識し、どのように解消していくかが新中期経営計画の中身になっていなければいけない」と清水社長。常識が常識でなくなるパラダイムシフトが頻発する時代にあって、グローバルでの事業展開スピードやマーケティングの強化、成長への基盤づくりが不二製油グループの課題になっており、変革が必要との考えに基づき、改革をやりきる4年間となる。
 新中計の基本方針は、1)コアコンピンスの強化──チョコレート用油脂とチョコレート、製菓・製パン素材の事業を拡大・発展させ、グループの収益拡大・安定成長を図る。2)大豆事業の成長──植物性たん白の事業を通じ、地球と人の健康を追求していく。環境と健康に配慮した食文化(フレキシタリアン)の成熟にともない、時代に合った製品の提供を行う。3)機能性高付加価値事業の展開──多糖類事業を始め、昨年発表した安定化DHA/EPAの事業展開を進めていく。栄養・健康分野への進出を図り、グループ収益の安定化を図る。4)コストダウンとグローバルスタンダードへの統一──次世代へ向け、グループ全社の生産効率を高めることを目的とした組織を編成し、競争力向上に努めるとともに、グローバルでの基幹システムの統一・決算期の統一を進める。
 酒井CSOは4つの基本方針に関して「1~3には、事業の規模感も利益の大きさも差がある。コアコンピタンスの強化については現在、当社の中心的な事業になる。大豆事業の成長と、機能性高付加価値事業の展開については、将来、人のために働く企業、人と地球の健康に貢献する企業、おいしさと健康を中心に考えていくために、戦略的な事業を立ち上げてしっかり行おうということ。大豆事業は50年以上になるが、かなり環境も風も市場も変わってきており、いよいよチャンスだと思っている。機能性高付加価値事業を含め次に繋がる事業の位置づけということで、この3つの方向性を決めたが、実際にホールディングス体制になって色々な不具合が見えてきている。そこを新しい中計期間の中で、先送りせずにやり遂げたいということで、コストとグローバルスタンダードへの統一を掲げている」と説明した。
 具体的にどの地域で何をどう強化していくのか。コアコンピタンスについては「日本はかなり設備の老朽化が進んでいる。安心・安全、品質、生産性の面から手を入れなければいけない。ここも先送りできない。また、チョコレートが好調に伸びているので新規設備を検討している。中国については、張家港に工場があるが、広州に第2拠点の工場を作る。これは乳酸発酵事業から開始するが、張家港の工場と同じように複合的な提案ができるようなラインナップを揃える工場にしたい。北米は2015年3月に新規の脱臭塔が完成したが、主にノントランスの風を受けて、昨年度第4四半期でフル稼働になった。もうひとつ同様の規模の設備を考えている。南米は経済があまり良くないが、ハラルドは予算通りの成績を収めることができた。しかし、生産能力が足りず、きっちり出荷できていない月も見受けられる。これは新しい工場ではないが、現工場の再構築を進め、生産能力の工場を図りたい」と語った。
 大豆事業について酒井CSOは「日本のUSS事業は今年度1月くらいから少し良い兆しが見えてきたので、さらにドライブをかけたい。中国は高齢化がかなりのスピードで進んでおり、一人っ子政策もあって、病院や健康・栄養に関するインフラ・製品も足りないということで、当社は今まで素材を販売してきたが一歩進めて素材をさらに加工した製品に挑戦したい。北米ではUSS事業の展開を検討しているが、個人的にはぜひ始めたいと思っている」と意欲を示した。一方、大豆事業の構造改革に関しては、この4年間を最終ステージに位置づける。日本国内でハム・ソーセージや水産練り製品などに使われる分離大豆たん白は、中国勢の価格攻勢が強まり、過去の高付加価値製品が今はコモディティになっているものもあり、再構築を進める。
 独自の世界で唯一の安定化技術(FST:Fuji Stabilization Technology)を活かした安定化DHA/EPAや、好調な多糖類のさらなる開発、設備化も行っていく考え。

 松本CFOは2020年度の財務目標について「重視する点はROE10%、キャッシュフローを生む前提となる営業利益CAGR(年平均成長率)6%以上、CCC(キャッシュ・コンバー. ジョン・サイクル)10日間の削減」を挙げた。特に営業利益については、2010年3月期の179億6,000万円の最高益を今年度は更新する勢いにあるが、そこまで7年を要したことを問題と認識している。「今期は好調な業績だが、かなりの追い風もあることは事実で、安定的にいかに成長できるか、単にトップラインを上げるだけではなく、財務の色々な効率化を図りながら収益を押し上げることが必要」との考えを示した。
 財務運営方針については、1)持続的な利益成長、2)財務の健全性堅持、3)資本効率の降雨状、4)財務ガバナンス強化を掲げた。営業キャッシュフローは4年間累計1,000億円、CCCの改善により100億円の創出を見込む。一方、設備投資に累計600~700億円(国内と海外、約1対1の比率)、M&Aや新規事業開発に500億円を準備する。