• 遺伝子組み換え

バイテク情報普及会がGM作物の経済的貢献度を報告

 バイテク情報普及会は3月14日、東京・中央区においてメディア向け勉強会を開催し、バイオテクノロジーの最新動向について発表した。

 わが国は遺伝子組換え作物(以下、GM作物)を年間約1,700~1,800万トン輸入する消費大国だが、これまで輸入による日本経済へのインパクトに関する論文はほとんど見当たらなかった。
 そこでこのたび、東京大学大学院農学生命科学研究科農業・資源経済学専攻経済学研究室の本間正義教授・齋藤勝宏准教授のチームが、輸入国としての日本からみたGM作物の経済的インパクトについて調査を実施し、2016年10月23日に環太平洋産業連関分析学会で発表した。
 勉強会では、本間教授が調査結果について報告し、齋藤准教授を交えて質疑応答を実施した。またその前談として、バイテク情報普及会の今井康史事務局長がGM作物の意義とそれをとりまく環境について説明した。


 今井事務局長はまず、世界のGM作物の栽培面積が2015年までの20年で170万haから1億7,970万haにまで拡大したこと、主要なGM作物のうち特に大豆は全世界で約83%がGM品種であること、GM作物拡大の背景には収量や収益の向上など農家にとって様々な価値があることなどを説明した。
 安全性に関する最新の理解では、昨年5月、米国科学アカデミーが、約900の研究論文、賛成派・反対派双方による80回の公聴会、700のパブリックコメントを調査し、GM作物が健康への悪影響があるとの証拠はないこと、GM作物に由来する食品の消費に起因する健康への悪影響についての証拠はないことを報告したと紹介した。
 また昨年6月には、ノーベル賞受賞者有志(存命者293名中123名が署名)が声明を発表し、バイオテクノロジーを用いて改良された農産物、とりわけ後進国で有用なビタミンAを多く含むゴールデンライスに対する国際環境保護団体グリーンピースの反対運動中止を求め、各国政府に要望した。
さらにわが国では今年3月、日本学術会議会員・農学系大学長・学部長・国立試験研究施設長(現役・経験者)らによって構成される日本農学アカデミーが、国の主導のもと日本の農業環境においてGM作物の利点の実証栽培を行うこと、除草剤耐性テンサイの北海道における栽培試験を行える環境づくりに国と道が取り組むこと、結果を公表し国民的検証、理解につなげることについて提言した。
 今井事務局長は最後に、わが国の食料自給率が39%と先進国の中でも特に低く、GM作物を大量に輸入・消費していることを述べ、「遺伝子組換えが我われの生活に重要な支えとなっている」と本間教授の講演につないだ。

 本間教授は、「遺伝子組換え作物が日本経済と食生活に与える影響とは」と題して、①GM作物輸入の実態、②GM作物の経済貢献の計り方、③産業連関分析モデル・アプローチ、④応用一般均衡モデル・アプローチ、⑤それぞれの結果、⑥モデル分析の解釈の留意点という内容で報告した。

 GM作物のマクロ経済への貢献に関する分析結果は、「モデルA」では、GM作物の生産額約5兆5,000億円(全体の0.6%)、GDPに相当する付加価値額は約1兆8,000億円(同0.4%)となり、「モデルB」では、生産額約10兆5,000億円(同1.1%)、付加価値額約4兆4,000億円(同0.9%)の貢献度となった。また、これを家計当たりの所得に直すと、年間2万5,000~6万円の経済効果、1人当たりの所得では、年間1万~2万5,000円の経済効果と算出された。
 本間教授は、重要なのはGDPに相当する付加価値額であるとし、これは初期の政府推定でTPPの影響評価が0.6%と言われていたことから、「ある意味、当時考えられていたTPPの影響と同じくらいの影響はあるという解釈もできるかもしれない」などと述べた。また、同様にコメの波及効果とGM作物を比較した際の経済貢献度は、GM作物がコメの3分の2に当たる結果となった。

 なお、詳細の研究報告書は、バイテク情報普及会の公式HP(http://www.cbijapan.com/)内「新着情報一覧」に掲載されている。