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USSECが米国油脂事情セミナーを開催

 アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は、全国油脂販売業者連合会の協賛により、8月2日、東京・京橋のTKP東京駅八重洲カンファレンスセンターにおいて米国油脂事情セミナーを開催した。
 加工油脂メーカー等で油脂の技術開発を長年担当し現在はコンサルタントのフランク・フライダー氏が「米国の大豆油市場」ついて、USSEC本部で油脂担当ディレクターであるマリパット・コルベット氏が「米国大手食品メーカーのサステイナブルな大豆・油脂製品志向の動き」を、Agri-Pulse Communicationという農業関連の編集者で米国政府筋の動きに精通しているビル・トムソン氏が「米国食品業界におけるGMOラベル表示」について、それぞれ講演した。

 フライダー氏は、FDAが2006年1月からトランス脂肪酸の含有量を表示義務化したことにより、多大な影響を受けていることを指摘した。米国の油脂市場でそれまで79%(2004年772万トン)を占めていた大豆油(バイオディーゼル用途を除く)は、近年では60%を下回るまでシェアが低下し、136万トンの減少につながっている。その一方、ナタネ油のシェアは4%から16%に拡大し、約160万トン増、パーム油は3%から8%へ拡大し、約100万トン増となっている。
 さらに、昨年6月、FDAが2018年6月18日より部分水素添加油(PHO)をGRAS(一般的に安全と認められる)の対象から除外する決定を発表した。
 一方、加工食品原料におけるPHOの代替としては、当初はコーン油や綿実油、落花生油、コメ油や、特性が強化されたオイルの第一波である高・中オレイン酸のヒマワリ油、高オレイン酸ナタネ油、低リノレン酸大豆油の利用が模索された。しかし、単体では性能、高コスト、安定供給の欠如を理由に完全な代替にはならなかった。また、PHOを使用したマーガリン類にも解決策が必要だった。固形脂ではパーム油やパーム核油、ヤシ油、ラード、牛脂、完全水素添加油に目が向けられた。また、新たな部分水素添加酵素を開発し、トランス脂肪酸発生を抑えてPHOを生産する試みもあったが、いずれも恒久的解決策を満足にもたらすと思われるものはほとんどなかった。さらに洗練された代替品が必要で、油脂調合技術や主にパーム油系の分別油、エステル交換等への関心が高まり、さらにそれらの技術の洗練が進んだ。
 FDAのPHO禁止に関する決定を受け後退したにも関わらず、米国の大豆産業は依然として活気に溢れ、前向きである。調合やエステル交換といった技術を用いて危機的事態に対応してきた。その中で開発された高オレイン酸大豆油は、PHOの禁止によって生じた需要減少の問題に一層進んだ対応をすることができる。供給安定性でもナタネやヒマワリ、サフラワー油に比べて大豆は遥かに大きい。大豆油の優れた風味、健康に良い成分、汎用性の高い機能性、さらに供給力、値頃感、長い利用の歴史から、大豆油が今後数十年にわたり、世界の食品技術者のツールキットを完全なものにするだろうと期待感を示した。

 コルベット氏は、企業の社会的責任の観点から持続可能な原料調達が大きなテーマとなっており、Fiekd to Marketのように生産者団体から農業ビジネス、食品メーカー、小売企業までサプライチェーンが団結した組織が持続可能な農業問題に協調的に取り組まれていることを説明した。
 米国大豆のサステナビリティ認証プロトコルは、2013年末から証明書の発行を始めている。現在、米国の41の輸出企業によって提供され、16カ国へ輸出されている。わずか3年で550万トンの米国大豆がこの認証を受けている。米国の持続可能な大豆の輸出量は14年の85万トンから15年には465万トンに増加した。急速に関心を高め、今年はこれまでに300を超える証明書が発行されている。

 トムソン氏は、米国上院で7月7日、下院で同14日に可決されたバイオ食品開示基準について、同28日にオバマ大統領が署名を行ったばかりとタイムリーな中で、米国の遺伝子組み換え食品(GMO)表示とその背景について説明した。