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ランクセスが2016年度の活動に関する戦略を発表

 ランクセスは4月19日、東京・千代田区のパレスホテル東京において、「2016年度の活動に関する戦略記者説明会」を開催した。世界最大の合成ゴムメーカーである同社は、サウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコ社と合成ゴムの合弁会社「ARLANXEO(アランセオ)」を4月1日付けで設立した。記者説明会では、ドイツ本社より来日したマティアス・ツァハトCEOが今後のビジネス戦略および新合弁会社ARLANXEOの最新状況について説明した。

 ランクセスは、2005 年初めバイエルグループの化学品事業と高分子材料事業の一部が分離・独立し設立された。29ヵ国で約1万6,200人の従業員を有し、特殊化学品におけるリソリューションプロバイダーとして、ハイパフォーマンスプラスティック、中間体、パフォーマンスケミカル市場を牽引している。
 2015年は困難な環境下で順調な事業再構築を成し遂げ、特別項目調整前のEBITDAは2013年7億3,500万ユーロから2015年8億8,500万ユーロに伸長し、2015年の純利益は1億6,500万ユーロ(前年比351%)と好調に推移した。ツァハトCEOは「世界中で働く従業員の努力のおかげで大変成功を収めた2年間となった」と振り返り、昨今のグローバル競争に影響を与える5つの主要動向に関して「化学業界ではアプリケーション開発、プロセス開発に軸足を置き、世界規模でイノベーションが進行している。また、特に欧州において化学業界における競争が激化している。欧州の化学製造業は、原料供給が少ない不利な条件と輸出産業の浸食がある中で統廃合をくり返している。さらに、アジアで競合企業が出てくるなど、世界で競争力のある原料価格と継続的なコスト改善がますます重要になっている。アジアは今後も重要な成長地域となっていくだろう。そしてこれからは環境基準の順守が非常に重要となり、新興市場への参入条件となる」と説明した。

 ランクセスはこれらのトレンドに備えるべく、2014年4月より24ヵ月間で新たな戦略的立場を構築してきた。その最たる例であるサウジアラムコ社との合弁企業設立に当たり、過去2年のうちに世界規模の2つのプラントを順調に立ち上げた。新合弁会社ARLANXEOによって、ランクセスは世界最高の技術力だけでなく原料供給において強みを発揮する。
 
 サウジアラムコ社が出資する約12億ユーロのうち、有機的成長に向けて約4億ユーロ、金融負債削減に約4億ユーロ、自社株買い戻しに約2億ユーロを活用していく。バランスのとれた化学業界の幅広いポートフォリオと、卓越した技術と市場ポジションを活かし、成長地域である中国、東南アジア、さらに新たに北米に注力するほか、欧州では化学産業の再編を積極的に推進し、特に中規模市場においての拡大を図る。

 続いて、日本法人ランクセスの辻英男代表取締役社長兼CEOが登壇し、国内の主要事業における取組について説明した。日本法人では、ARLANXEO設立にともない、タイヤ向けゴム事業と工業用ゴム事業の2事業部を社内の事業部として継続するとともに、ARLANXEOとの販売委託契約に基づき合成ゴムのマーケティングおよびセールスを継続する。これまで国内で展開してきた10事業部を維持し、うち2事業部がARLANXEOの製品およびサービスを提供する専門の部隊となる。
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