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花王が生命美容科学に注力

 花王は8月26日、東京・中央区のマンダリンオリエンタル東京において、「SOFINA新製品発表会」を開催した。第一部では、澤田道隆代表取締役社長が事業方針について、ヘルスビューティー研究所長の松尾恵子氏が今後の研究の方向性となる生命美容科学について説明した。 

 澤田社長は初めに企業理念や“よきモノづくり”の活動について説明し、「当社の研究開発費用は年間の売上高の約4%、500億円強使っているが、その約半分が基礎研究、いわゆる本質研究に費やしている。皮膚、毛髪、健康代謝等の人に関わる本質、それから泡、水、界面活性、環境等のモノに関わる本質。これらは非常に深いので、簡単に解明することはできない。ただ、継続的にこうした研究を掘り下げ深化させていくと、その過程の中で新たな発見や気づき、新たな角度の切り口が見えてくる。これを製品・事業にうまく活かすことによって、これまでにない大きな価値を生みだすことができる。この本質研究の深化によって、当社はコアの事業である清潔、美、健康、この領域の中で暮らしを変える商品をたくさん提案した」と研究開発の実績を振り返った。
 また今後については、「ある程度こういう領域を深めていくと、その領域と違う領域をうまく融合させることで、これまでにない世界を生み出すことができるのではないかと考えている。当社はこれから先、5年先、10年先、20年先の未来に向けて、今のベースをさらにレベルアップした形での価値提案をしていきたいと考えていて、深化だけではなく、深化と融合で大きな世界を作り上げていきたい」と語った。すでにスタートしている例として、泡、界面、環境のそれぞれを深めた領域を融合させた環境対応型の洗浄化学による豊かな泡立ち、泡の持続性、すすぎ時の泡切れといった技術を紹介し、それを応用し一段高いレベルでの価値提案をしている製品として「ウルトラアタックNeo」「キュキュット」「バスマジックリン」「ビオレu」などを挙げた。美の領域については、同社が30年以上突き詰めてきた皮膚科学研究の歴史を述べ、「深まってきた皮膚科学に当社が培ってきたヘルスケアをベースとした健康科学をうまく取り入れることで、新たなサイエンス、生命美容科学という領域を生み出すことができるのではないかと考えている」と今後の可能性を示唆した。

 続いて松尾氏は生命美容科学研究について、セラミド研究をはじめとする皮膚科学研究の成果を紹介し、皮膚内部の新陳代謝の働きなどに触れつつ、「皮膚を身体全体でとらえ土台である身体機能に働きかけることにより、身体全体の力で美肌を生み出す」と新たな視点を紹介した。また、土台となる身体機能の中でも最初にアプローチする血液循環や神経系の働きについて「自律神経、感覚神経、血管内皮機能を高めることで、血流を調節する力=血管力を高め、皮膚細胞の働きをよくして美しい肌を生み出す」と説明した。同社は全身の血管力と肌との関係を世界で初めて明らかにしている。こうした血管力を改善する技術としては、長年の研究実績のある炭酸ガスとコーヒーポリフェノールであるクロロゲン酸に着目した。これらの技術を導入した試験では、血管力や皮膚の水分量が改善することを確認し、画像では毛細血管の動きが活発になった変化をとらえている。最後に松尾氏は「これから生命美容科学研究を強化し、技術領域を血液循環・神経系から、炎症・免疫系、内分泌・代謝系へと拡張し、新たな健康と美の価値を提供していく」とまとめた。