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アメリカ穀物協会がトウモロコシに関するセミナー

 アメリカ穀物協会は6月15日、東京・港区のホテルインターコンチネンタル東京ベイにおいて、「2015年産米国産トウモロコシに関するセミナー」を開催した。セミナーには米国トウモロコシ主要生産3州より7名の生産者を招き、最新の生育状況の説明やパネルディスカッションを行った。

 初めに、アイオワ州トウモロコシ生産者協会第6地区部長のジム・グリーフ氏が講演した。アイオワ州はコーンベルトの真ん中に位置する。グリーフ氏は農家の第5世代で、1,000エーカーの農場でトウモロコシと大豆を約半分ずつ栽培している。トウモロコシの80%は地元の加工業者に引き渡し、多くがエタノールや甘味料向けとなる。残りの20%はミシシッピ川を通ってCGBやカーギルにより輸出される。
グリーフ氏の農場ではGMとNon-GM作物の両方を栽培しており、この2~3年は除草剤耐性を持つラウンドアップレディーやリバティーリンクのほか、トウモロコシではBt(害虫抵抗性)コーンも使用している。グリーフ氏はGM作物について、購入者と米国の環境の双方にプラスになることを強調した。
 農場の貯蔵容量は10万ブッシェルで、収穫する穀物の2/3を保管している。トウモロコシの収穫は、水分量20~25%が最も適している。ロスが最も少なく、特に機械で収穫する際の作物に対するダメージが最小限に抑えられるという。貯蔵の際は水分を15%まで減らすために、温度管理を行いながら乾燥機を使用しており、貯蔵後は定期的なサンプリングで水分や害虫を検査する。出荷は第二等級以上で、達しない場合は地元の家畜業者に飼料として売り、第一等級は輸出向け、第二等級はエタノールや甘味料といった加工用向けとなる。
今年の生育状況は、5月10日の作付け後5月18日に出芽が確認され、好調なスタートを切っている。15/16年度のアイオワ州のトウモロコシ生産は、作付面積5.5ha、単収11.2トン/ha、収穫量5,987万トンと予想している。
 
続いて、オハイオ州トウモロコシマーケティングプログラム政府産業関連部長のキース・トラッカー氏が講演した。トラッカー氏の農場はオハイオ州の北西部に位置し、家族で1,300エーカーの農場を営んでいる。トウモロコシ、小麦、大豆、時折ポップコーンを育てている。
 15/16年度のオハイオ州の生産予想は、作付面積350万(前年370万)エーカー、生産量5億3,600万(同6億1,100万)ブッシェルで、14/15年度の過去最高記録よりも減少する見込みだ。USDAによる15/16年度の全米の予想は、作付面積8,900万(同9,050万)エーカー、生産量132億(同142億)ブッシェル、繰り越し17億4,000万(19億5,000万)ブッシェルとなっている。また、トラッカー氏は「平均の農場価格は、昨年3ドル65セント/ブッシェルだったが、今年は3ドル60セントとなる見込みだ」と予想した。
 今年の生育状況については、「5月24日時点で、昨年の56%に対してすでに74%が発芽している。早く作付けをすることで畑にある状態で自然に水分が下がるので、被害粒や異物が少なくなる」と述べ、今後の天候次第とはなるものの、非常に良いスタートを切っている説明した。
 テクノロジーについては、自動運転で作付けするトラクターや、作付け・収穫のときに用いるGPS機能やドローンを使用した農場のマッピング、土壌の状態に合わせて播種時の分量を自動調整する機能などを紹介した。最新の精密農業では、カリウム、イオウ、亜鉛、マンガン、ホウ素などを調査した土壌試験をもとに、土壌タイプごとに区分けし、データをもとに必要な栄養素をそれぞれの土壌に加える施肥の方法を取っているという。さらに、トラッカー氏の農場では、2年前に自然乾燥するための施設を導入したことで、被害粒を防ぎ、より品質の良いトウモロコシを得ることができるという。

パネルディスカッションでは、エタノール政策の見通しやバイテク技術の成果、農業技術の紹介や価格、単収見通しなどが議論された。最後に、アメリカ穀物協会コミュニケーション部長のメリッサ・ケッセル氏と同日本代表の浜本哲郎氏がそれぞれ挨拶し、閉会となった。