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ロカボグルメフェスティバルで山田悟氏が食後の血糖値を上げないロカボ食の魅力を語る

 食・楽・健康協会は7月17~18日、東京・丸の内の丸ビル1階のマルキューブで、糖質制限食および食後高血糖啓蒙イベント「ロカボ(低糖質)グルメフェスティバル」を開催した。話題のシェフ・パティシエが監修した美食の低糖質メニューが食べられるロカボカフェや、血糖値測定コーナー、協賛企業ブース、ロカボ商品プレゼント企画などで賑わった。
 同協会の山田悟理事長(北里研究所病院糖尿病センター長)による糖質制限食と食後血糖値に関するセミナーでは、Wakiya監修のロカボ白胡麻担々麺などおいしい低糖質食の実食を交えながら、糖尿病・メタボの実態や低糖質食の理論的背景、カロリーや脂質制限食が現在どのように捉えられているか等について解説した。

 山田氏は、糖質制限食に関するエビデンスが増えてきており、米国糖尿病学会が2013年に糖質制限食を糖尿病治療食の第一選択肢として全面的に認める勧告を行ったことなどを紹介した。08年の同学会の勧告では、1年までを期限とする条件付きだったが、11年に2年まで、そして13年には期間の条件なしに糖尿病食の第一選択肢に認められている。「かつては米国糖尿病学会も炭水化物比率50~60%が良いと言っていた時期があるが、今はそんなことを言わなくなっている。糖質を控えるとたん白の過剰摂取で腎臓が痛むのではないかという先生がいたが、今はまったく逆で、たん白を制限しても腎臓を保護しないから、たん白制限を推奨しないと言っている。今もなお残念なことに炭水化物比率50~60%が健康に良いと言っている医療従事者がいるかもしれないが、それは栄養学の動きに付いて行けなくなっている方と思ってもらえればと思う」と山田氏はいう。
 米国でロカボ食への見方に変化が出てきても、これまで日本人でのエビデンスがないことが反ロカボ食派から指摘されてきた。しかし、山田氏は「私どもで昨年、カロリー制限とロカボ食を比較した論文を出した。その時の食事の内容は、1食当たり糖質20~40gで3食を食べてもらい、1日に10gまでのスイーツ、間食を必ずして下さいという指導をした。この食べ方をして血糖の上昇を改善できたのはロカボ食であるし、また中性脂肪を下げることができたのもロカボ食であった」。しかし、体重への影響については、欧米人のように肥満の多い国でロカボ食は体重の減少効果がしっかりあるが、日本人はどうも状況が違うという。日本人を対象にした同氏らの研究では「血糖の状況については、痩せている人から太っている人まで、6カ月後、12カ月後、どのグループでもきちんと血糖の状況は改善し、下がった。ところが体重については、太っている人はきちんと痩せる。太っているレベルが軽い人では少し減っていて、普通の人ではほとんど体重は減らない。痩せている人では体重を増やしている。これは筋肉を付けながら内臓脂肪を削れることになる」と山田氏。
 では、太っておらず、糖尿病でもない人にロカボ食はどんな意味があるのだろうか。「食後の血糖に対する影響は、糖質のみが血糖値に影響を与えて、油やたん白は血糖値を上げない。上げないどころか糖質による血糖の上昇にブレーキをかけることが、今わかっている。この血糖の上下動は、身体に対して非常に大きな意味合いを持っている」として、血糖を正常に保った場合と、高血糖を維持した場合、そして正常と高血糖の状態を繰り返した場合の3つのパターンで細胞の培養実験を行ったデータを山田氏は示し、「死んでしまった細胞が最も多いのは上下動をつけたときだった。実は血糖が単に高いよりも上下動の大きさこそが細胞の負担になっていると言われている」という。また、血糖の上下動が大きいほど認知機能が低下することにも言及した。
 「糖尿病の人はロカボで血糖のコントロールができ、太っている人はロカボで体重の減量ができる。痩せている人はロカボで食後の高血糖を是正しながら筋肉の維持・保護をすることができ、そうでもない何の病気もない人にも将来の認知症の発症予防ができるのではないかというような話になるわけである」と語る山田氏が提唱する糖質制限食では、糖質を1食当たり20~40g、1日70~130gに制限(間食・おやつとして10gの糖質摂取含む)する一方、エネルギーや脂質、たん白質、食物繊維については制限しない。

 ロカボグルメフェスティバルの会場には、ロカボ食品を提案する協賛企業の展示ブースも設けられた。竹本油脂は、「太白胡麻油」や「太香胡麻油」、「太香濃口胡麻油」などのゴマ油は糖質ゼロで酸化安定性に優れ、コクと香りで低糖質食にも適していることをアピールした。また、パティスリーでも低糖質スイーツが注目されている中、「太白胡麻油」を使った低糖質のカマンベールチーズケーキやガトーショコラといったスイーツレシピの提案にも注力している。