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新生・カネカ食品が始動

 カネカは、競争力強化、事業拡大を目指し、連結子会社である食品事業部門の販売会社4社を7月1日付けで統合し、これに合わせて存続会社であるカネカ食品販売の社名をカネカ食品へ変更した。同日、カネカ食品設立等に関する記者説明会を開催した。

 会見では、はじめにカネカの原哲郎取締役専務執行役員が挨拶を行い、「当社の食品事業は連結売上高が年間1,300億円を超える当社最大の事業である一方、カネカは2020年に1兆円の売り上げを目指す長期ビジョンを掲げている。厳しい環境の中で、いかに食品事業の成長シナリオを描くか、覚悟が問われている。当社食品事業部門は、食品事業部のほかに10社グループ会社があるが、この度の販社統合は、食品事業グループのバリューチェーン強化の中で最も重要な施策と位置づけている。今回の統合で目指すものは、4社が一体となることでの事業運営の効率化もあるが、最も重要なメッセージは、当社の食品事業を牽引するのは新生・カネカ食品であるというコミットメントだ。原材料問屋としてのカネカ食品は、統合後は製パン・製菓業界では圧倒的にNo.1の規模になる。その事業基盤をベースに製品もサービスも量も質も圧倒的なNo.1の会社を目指したい」と意気込みを示した。
 カネカ食品はビジョンステートメントとして『驚きの、おいしさのそばに、いつも。』を掲げている。原取締役は「これまで個々の地域あるいはユーザーに密着して築き上げてきた信頼関係や、それを支える現場力は、カネカ食品の根幹をなすものであり、引き続きその力に磨きをかけていく。お客様と一緒に成長するため、新鮮で多彩なソリューションを提供し続ける会社になりたいと考えている」と語った。

 続いて榎潤執行役員食品事業部長が「食品事業グループ戦略とカネカ食品の位置づけについて」説明した。同社食品事業グループは、カネカ本体および関係会社を含めて、加工油脂、パン酵母、冷凍生地、生地改良剤、スパイスといった幅広い事業を展開している。食品事業を取り巻く環境は、人口の減少(需要の減少)、あるいは消費構造の変化、原料高、円安でますます厳しくなっている。こうした中、同社食品事業は、国内収益の収益力の強化、海外展開の推進、新規事業によるプロダクトミックスの変革の3つを柱に事業展開を進めている。
 榎執行役員は「販売会社4社の統合は、国内事業収益力の強化に向けた最重要の施策である。食品事業グループの販社は、製パン・製菓市場を中心に、油脂加工技術と発酵技術をベースとした当社製品群の販売と、多くの食品素材企業の製品の仕入れ販売をセットで行う業界でもユニークな存在として営業活動を実践してきた。2008年に全国6販社体制を4販社体制へ再編し、2010年に西日本物流センターの稼動と中四国物流の再編、2012年に東日本物流センターの稼動にともなう関東物流倉庫の集約などを実施している。今回の統合により、年商1,000億円規模の製パン・製菓向けを主体とした原材料問屋が誕生することになる。カネカの製品群と豊富な仕入れ品の組み合わせに加えて、日本全国の営業・物流拠点網、地域密着の営業力を強みに、提案力・コスト・サービスにおいて、徹底した競争力強化を図りたい。さらに、製パン・製菓市場で取扱い商材の拡充と積極的に事業拡大を進めるとともに、製パン・製菓以外への市場への領域拡大を目指したい」との方針を示した。
 また、カネカ食品グループには、製造販売会社としてカネカサンスパイス、新化食品、太陽油脂、長島食品の4社もある。「各社の製品を市場展開するにあたり、各グループ企業が連携し、従来は主にカネカ食品がカネカの製品を4販社で販売してきたが、今後は新生・カネカ食品が販売網・配送網を十分に活かし、グループの製造販売会社の製品を拡販していく体制にもっていきたい」と語った。

 カネカ食品の佐々木伸也社長は同社の概要と施策について説明し、「カネカ食品は、本日より新たな歴史を歩み始めた。これまで4販社は長年にわたり各地域に根付いた事業展開により、お取引先様とともに成長してきた。この地域に密着した事業展開は堅持しながら、新たに全国規模という視点を活かしてお客様に貢献していきたい」と語った。
 「驚きの、おいしさのそばに、いつも。」というビジョンステートメントには、人と人とのつながりをベースに、驚きのある、おいしい食品素材を顧客に届けるスペシャリティホールセラーを目指し、新たな食文化の創造に貢献したいという思いが込められている。製パン・製菓市場だけではなく、加工食品、飲料等、市場の新しい領域に挑戦し、総合的な問屋へ進化するために掲げる施策は6つある。
 1つめは情報機能の強化。新宿区の本社が東日本、全国を管轄し、従来の地域販社は東海支社、西日本支社、九州支社という形で設置する。これにより、IT技術を活用したネットワーク機能を構築する。2つめは、全国30カ所の営業拠点の強化。地域に根付いたこの機能をさらに強化し、顧客とのコミュニケーションを緊密にして、より価値のある情報や製品を提供していく。3つめは、物流機能強化。埼玉県川越市と大阪府摂津市にある東西の2大物流センターを基点に、全国22カ所の物流拠点整備強化を行い、物流品質向上を図る。配送の受託ビジネス等も拡充させたいとしている。4つめは、購買機能の強化。国内はもとより海外からの調達も含めて、様々な仕入れ品の品揃えを充実し、物流機能との連携による効率化を図る。5つめは、提案・商品開発機能強化。全国4箇所にあるテストキッチンの拡充を行い、顧客とのコミュニケーション機会を拡大し、商品開発にさらに貢献していく。6つめは、新たな領域への展開強化。カネカ本体が開発する食品素材の革新技術や新製品を市場へ導入・拡販する機能を担うことにより、製パン・製菓以外の新たな領域への進出を積極的に推進し、総合食品材料問屋への進化を目指す。