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ADEKAが食品部門の2013年新製品を発表

 ADEKAは3月27日、東京・荒川区の同本社で食品部門の2013年RISU BRAND新製品を発表した。
 発表会の冒頭、林義人執行役員食品企画部長が挨拶を行い、食品事業の業績について「前年の2011年度は震災の影響を受けたことで、2012年度については増収増益で終えるだろう。2012年度は震災前の2010年度の状況に早く追いつき、追い越すんだということで進めてきた。アロマーデというセミロングのヒット商品や、12年度の新製品が牽引して12年度の売上高は2010年度に追いついた。ただ、色々な環境の逆風があり、利益的には少し届かなかった。2013年度も同様に、新製品を牽引役に増収増益を目指していく」と語った。
 2013年度のRISUブランド新製品の共通テーマは「Best benefit」。「当社はB to Bの真ん中におり、当社を含め、お客様と、そしてその先のお客様、最終的には消費者様に喜んで頂けるものをつねに目指している。ある程度、品数を絞っているが、アロマーデのように、それをテコにまた拡大、横展開を図りながら、最終的な売り上げと利益を目指したいと考えている」と新製品への意気込みを示した。

 今年の新製品のテーマを「Best benefit」に置いた背景には、より良いものを選択するといった消費活動につながる価値の提案が求められていることがある。消費者心理として、景気回復への期待感がある一方、低価格慣れ、節約慣れにより価格訴求だけでは消費者の購買マインドを刺激することが困難になってきているからだ。機能的効果や便益を訴求することで、商品作りに貢献していこうというのが今年のRISUブランド新製品の共通テーマになっている。
 新製品は、主に製パン用途を対象とした折込用油脂、練込用油脂、フィリングが2品種の4品種。その他、リニューアルを含めて、荷姿等を小さくしてリテールを対象にした3品を上市しており、実質7品を投入している。販促活動では、5月15~17日に大阪で開催されるベーカリー素材EXPO2013にも出展し、製菓材料とあわせた提案も行う考えだ。
 また、7月にはホイップクリーム「エースホイップ19」、濃縮乳タイプクリーム「ホルン」のパッケージデザインの刷新に加えて、昨年発売した「ピュアブレンドホイップ」から、コンパウンドタイプの新製品を発売する。クリーム類のキャンペーン企画や、ジャパン・ケーキショーへの出展も予定している。

 「エクストラオリンピア(スライス)」は、バターのおいしさを追求したこれまでにない上質な風味の折込用油脂だ(荷姿:10kg段ボール、500g×10×2)。「ロールイン油脂のおいしさは、バターのおいしさをどのように目指すかに尽きる」(食品開発研究所第一食品開発室の武田了室長)というように、この製品は、バターのおいしさを追求し、翌日もその焼き立てのようなおいしさを持続できることに加えて、低温域での良好な作業性にもこだわって開発されている。
 クロワッサン等のペストリー製品はベーカーリーの定番商品であるものの、いちから作るには手間と熟練技術が必要で、かといって冷凍生地を使用すると差別化や独自性を出すことが難しい。そうした問題を解決するためにおいしさと使いやすさを両立した製品を開発した。バターシートの風味そのままを実現するため、バターを50%配合し、香料は不使用、代わりに独自の発酵素材を活用している。「通常、バターのものは、翌日になると極端にバター風味がなくなってしまうものだが、それを香料で仕上げると非常にわざとらしくなってしまう。それに対して、バターの成分を発酵させて作った独自素材を入れることで、乳風味を持続させることができた」(武田室長)という。翌日でもバター風味が持続するメカニズムについては、風味成分の比較など解析を進めているところだ。
 また、食べた時の食感がなぜバターのようになるのかについては、「バターは、焼いた後に固まると、硬い部分と液状部分が分離した状態でペストリーの中に存在している。そのため、食べるとジューシーに感じられる。そこで、焼いて溶けたバターが再び固まり直した時の状態を再現した油脂を使っている」という。これは、昨年の新製品の「オリンピアジューシーシート」にも活用されている技術で、今回さらにバターと組み合わせたハイコンパウンド品に応用したというわけだ。バターのにおいやうまみ、乳の甘み、余韻といった官能評価では、国産発酵バターとほぼ遜色ない結果が得られている。
 さらに、低温域で使いやすい物性(硬さ)に仕上げたことも特長となっている。使用適正域はバターが16~17度Cであるのに対して、「エクストラオリンピア(スライス)」は、バター50%コンパウンドながら、11~15度C程度で、きれいに伸びるように設計されている。

 「プラズママイルド」は、パンのソフト性、しっとり感、老化耐性に優れた練込用の機能性油脂で、規格はファットスプレッドとなっている(荷姿:15kg段ボール)。昨年、同様のコンセプトで発売した「プラズマDX」は菓子パン向けでの採用が多かったが、さらに用途を選ばずあらゆるパンでそうした機能を発揮できる練込用油脂として開発したものだ。
 パンを柔らかくするには、乳化剤をある程度入れるとでん粉の老化を抑えられ、ソフトでしっとりとしたパンができるが、反面、乳化剤の配合量が多すぎると風味の発現が悪くなったり、くちゃつきやすいといった課題があった。「プラズママイルド」は、最少量の乳化剤によってでん粉の老化抑制に最大限の効果を発揮するように設計されており、そのための独自の工夫が、でん粉との複合体形成能を高めるように独自加工した乳化剤を活用したことだ。これにより、ソフトでしっとりした食感の持続を実現できた。実際に、一般のマーガリンと「プラズママイルド」を使ったパンの硬さを比べてみたが、はっきりと柔らかさに違いが感じられた。経日的な食感の変化を抑える点に優れ、冷蔵陳列で販売するようなパンにも適している。

 フィリングは2品種を上市した。
 「コンプリートホイップ(ミルク)」は、すっきりした甘さとコクのある乳風味にこだわったフィリングで、どこか懐かしくやさしい甘さ、手作り感たっぷりの濃厚なミルククリームとなっている(荷姿:10kg段ボール)。
 パン・洋菓子ともに使用できるが、特に期待されるのが、ハード系のパンにバターや練乳などの液糖等を混ぜたクリームを挟んだような定番品へのサンド用途になる。自家立てのバタークリームは、すっきりした甘味とコクのある乳風味が好まれ、基本的に乳化剤は使用しない。それに対して、一般的なファットスプレッドのフィリングは、乳化剤を使用しており、どうしても風味発現が阻害されたり、後口の異味や雑味の存在が弱点だった。
 「コンプリートホイップ(ミルク)」は、乳化構造と配合する糖の種類を見直し、この点を改善することに成功している。特に、すっきりした甘みは、乳化状態が甘みを出すのを手伝っており、同社ではバターの乳化に着目したという。バターを乳化させている天然素材を使って、乳化剤を使うことなく作り上げている。そのため、口に入れた直後にすっと乳風味が出てきて、それが持続し、しつこくはなく爽やかな乳風味が広がる味わいを実現している。
 「エターナルホイップ(カスタード)」は、デザート用クリームをパン生地に合わせアレンジされており、濃厚な風味と口溶けの良さをあわせもった新しい食感のフィリングクリームだ(荷姿:10kg段ボール)。北海道産牛乳と、卵黄を配合しており、リッチなパン生地と組み合わせても風味がマッチする。また、温度による物性(硬さ)の変化が少なく、常温からチルド商品まで幅広く使用することができる。
 濃厚なカスタード風味と口溶けの良さを両立するため、カスタード風味を付与したフラワーペースト(O/W乳化)に口溶けの良いファットスプレッド(W/O乳化)を合わせ、窒素を注入して混合している。フラワーペースト部は、独自技術により、糊感を低減し、口中分散性を向上する一方、ファットスプレッド部は乳化構造と配合している糖を見直し、すっきりした乳味・甘味に仕上げてある。

 また、リテールを対象としたリニューアル品等では、ポンドタイプの純植物性ショートニング「プレミアムショートニング」(荷姿9kg段ボール、450ポンド×20)、パンに美しいツヤを付与するパン用つや出しクリーム「つやパンコート」(荷姿:1Lテトラパック×12/段ボール)、少量小分包装で使いやすい冷凍パイ生地「パイピークス100(30P)」(荷姿:1シートサイズ100mm×100mm×3.5mmで30枚入り/カルトン×6/段ボール×2)を発売した。


 ホイップクリームの市場展開については、本誌5月号で紹介する。