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日本メディカル ニュートリション協議会が発足

 いわゆる治療食品や高齢者用食品の市場は、2012年には年間1,500億円を超える規模になるとみられ、5年前に比べて約1.5倍へ成長している。特定の栄養素やカロリーを強化あるいは制限したり、食品や飲料の物性をコントロールして、とろみをつけたり、ゼリー状にするための製品が、病院や介護福祉施設などを中心に、治療や介護のために欠かせないものとなっている。こうした治療食品や高齢者用食品のメーカーは国内に30~40社あるが、このほど19社が集まり、日本メディカルニュートリション協議会が設立された。

 12月12日に開催された同協議会設立総会後、川口晋会長(ニュートリー社長)、黒田賢副会長(ヘルシーフード社長)、森川聡理事(日清オイリオグループ・ヘルシーフーズ事業部長)が会見を行った。会見の冒頭、川口会長は同協議会を設立した背景について「需要のさらなる拡大にともない、いわゆる治療食品を医療・介護の現場で安全に適正に使うために、より現場に則した製品説明が求められている現状を黙視することができない時代になった。制度上においても、例えば現在、特別用途食品という食品表示制度はあるが、本食品の普及と安全・適正な使用のためには、今ある制度のさらなる活用を提言する必要がある。そこで、この分野で事業活動を営む法人が集まり、課題の解決に取り組み、いわゆる治療食品業界の健全な発展を図るべく、日本メディカル ニュートリション協議会を設立するに至った」と説明した。
 同協議会では、「いわゆる治療食品に関わる情報提供・販売活動のあり方や、制度上の課題等について調査研究し、業界自主基準の策定や運用、行政への要望活動などを通じて、いわゆる治療食品が使用されている現場に則した適切な情報提供と公正な市場環境創造を目指していく」としている。

 いわゆる治療食品には、医療用医薬品のようにプロモーションコードはなく、治療食品の定義は曖昧なのが現状だ。黒田副会長は、いわゆる治療食品の定義について「薬事法があるので、何かに使えるという表現は非常に難しい。そのため治療食品という言葉自体も“いわゆる”を常につけざるを得ない。定義がしっかりとしていない部分を当協議会としてはきちんと整理していきたい」と語った。濃厚流動食品や咀嚼・嚥下補助に使われる高齢者用の食品は1,148億円、腎臓病や糖尿病などの患者に向けた栄養等をコントロールした食品や褥瘡対策、鉄・カルシウム・ファイバー補強、大腸検査食などが357億円規模と同協議会はみている。そのほぼ9割が病院や介護老人施設等で消費されている。
 治療食品は、診療報酬上では、高血圧食や高脂血症食のように特別の疾患に応じて病院等の給食で提供する際に、特別食加算の中で利用されている。栄養指導など医師からのリコメンデーションをもとに患者が独自に選択購入するものもあるが、ほとんどは医療従事者からのリコメンデーションがあった上で購入されているのが実態だ。「われわれが特に注意しなければならない啓蒙活動は、医療従事者に対していかに正確に情報を提供するかに、まずプライオリティを高くもっていくべきだと考えている」と川口会長は語る。

 また、病院や介護福祉施設で用いられる食品を扱う団体として、同協議会以外に日本流動食協会や日本介護食品協議会があり、それら団体との協業も求められる。同協議会の会員の中にも、それらの団体に所属している企業がある。森川理事は「単独ではなく他の諸団体と連携を基本に考えている。例えば物性の(自主基準策定)の問題についても、日本介護食品協議会で今、検討されている。一定の方向性を両団体で出していきたい」との意向を示した。また、行政機関との連携については「いろいろな形で行政とネットワークを構築していかなければならない。いわゆる治療食品の表現も含めて、厚生労働省や消費者庁といった行政との連携を図りながら、もう少し(医療従事者や消費者に)お話できる内容にして頂く要請もしていきたい。大規模災害等で、いわゆる治療食を必要な方が被災された場合に、迅速に商品を届けるネットワーク作りも業界団体として必要だ。昨年の大震災時には、水や食料は届いたが、トロミ調整食品もなければ、たん白制限食もなく、実際に苦労をされた患者さんもいたと聞いている。そうしたことがないように、行政と連携を密にしながら、対応できる仕組みを作っていくことも今後必要ではないか」と強調した。