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味の素3月期決算 営業・経常利益過去最高

 味の素は5月8日、東京・中央区のロイヤルパークホテルにて平成24年3月期決算説明記者会見を開催した。
 連結業績は、売上高1兆1,973億1,300万円(前年比99.1%)、営業利益725億8,400万円(同104.6%)、経常利益759億1,900万円(同107.7%)、当期純利益417億5,400万円(同37.3%)となり、営業・経常利益は過去最高益となった。
 大震災以降のブランドへの信頼感や内食回帰から家庭用調味料・加工食品の売り上げが伸びたほか、業務用調味料・加工食品も市場が回復基調にある中、堅調に売り上げを伸ばし、国内食品事業の売り上げは前期をわずかに上回り、営業利益は販売費の減少等から大幅増益となった。油脂関連のマヨネーズ類の売り上げは前期を下回ったとしている。一方、海外食品事業は、海外コンシューマーフーズの販売数量増や価格改定の浸透があったものの、全体では為替や原燃料高の影響を受け、微増収減益となった。
 また、バイオ・ファイン事業は、飼料用アミノ酸のリジンの販売数量増と価格上昇等が牽引。医薬用・食品用アミノ酸や甘味料の減収を補い、売り上げ高は前期をわずかに下回る水準にとどめた。営業利益については飼料用を含めアミノ酸の貢献から大幅増益となった。医薬事業は減収減益、提携事業のうち油脂については、販売数量が減少し前期の売り上げを下回ったとしている。
 25年3月期の連結業績予想は、売上高が2.0%増の1兆2,210億円、営業利益が1.3%増の735億円。海外コンシューマーフーズの数量増と単価上昇、国内食品のコアブランド拡大やバイオ・ファインの数量増で、カルピスの下期連結除外影響や医薬の減収(薬価改定等)をカバーし増収を見込む。営業利益では、バイオ・ファインの採算改善や電子材料の回復、海外コンシューマーフーズの売り上げ増により、医薬の減益や原燃料高等を補い増益を確保するとしている。

 味の素は、2011-13中期経営計画で「確かなグローバルカンパニー」を目指し、その基盤づくりに取り組んでいる。成長ドライバーのひとつに掲げる「グローバル成長」では海外コンシューマーフーズの事業拡大を柱としており、「主力商品の増産と次世代の中核商品を育成しようと進めている」と伊藤雅俊社長。「新しい施策として、ブラジルでSazon(風味調味料)の増産に約20億円の投資を決めた。また、タイでBirdy(缶コーヒー)の増産に約38億円を投資し、来年完工する。粉末メニュー調味料の領域も広げ、タイで唐揚げ、トムヤムクンスープ等を育成、Ros Dee Menuを昨秋発売した」という。MSG等のバルク販売から、家庭用調味料へ、さらに市場の成長にあわせて風味調味料、メニュー調味料といった付加価値化を推進する方針だ。また、新たにパキスタンや東アフリカ・北アフリカへの参入機会の検討、カメルーンにおけるWASCO社支店設立を検討し新市場拡大をめざす。
 もうひとつの成長ドライバーは「R&Dのリーダーシップ」。食糧と競合しない原料を使う発酵技術(ホワイトバイオ)や、動植物の生産性・質を向上させる技術(グリーンバイオ)、ファイン・ライフサイエンスの分野で新事業創出を図る。その一例が、東レと共同研究を進めているバイオベースナイロンだ。また、血液中のアミノ酸の濃度比率等から健康状態や疾病リスクを明らかにする独自技術「アミノインデックス」を活用した健康診断支援サービスを昨春より開始している。2016年までに川崎市で50万人のデータ取得をめざすという。

 一方、事業構造強化の取り組みについては、国内食品市場における消費者の意識変化への対応を進めている。「リーマンショックを経て量から質へ、節度ある消費が進み、さらに東日本大震災以降、信頼がないと安心できない状態が起きている」と伊藤社長は語る。製品をより良くし、用途や機会を拡大し、また製品情報をお客様と共有する仕組みを作り上げてきたことが、信頼される味の素ブランドに繋がっているという。
 また、低資源利用発酵技術にも引き続き取り組む。MSGや飼料用リジン、アスパルテームにおいて具体的な施策を進めている。また、事業ポートフォリオと機能バリューチェーンの適正化では、別項の通りカルピス社の全株式をアサヒグループホールディングスに譲渡することで合意。ITサービスについても、野村総合研究所と合弁でNRIシステムテクノを設立した。
 「カルピスを100%子会社にしたときに、アミノ酸と乳酸菌で新しい健康分野を作るということが目的のひとつにあった。もうひとつは海外の成長だ。その最初の目的について残念ながら必ずしも大きな成果が出ていない。実際に難しそうだと判断した。塩分30%減の<ほんだし>や<クノール>の野菜スープなど幅広い健分野でニーズに応えたい」という。